さて、本日持ち込まれたのはペンダントフレームです。
とりあえず画像を見てもらいましょう。
でたよ。またエグイ奴やな。。。
プロに持ち込むと直せはするけどこのネックレスが3本は買える値段になる奴です。
極力「修理」して欲しいとの事で私に依頼が来たわけですね。
うーん、限界があるんだよ??
とは言いつつも信用して依頼してきてくれたわけで嬉しいは嬉しいわけで、とりあえず頑張って直してみますか!
とはいえ正直これは相当えぐいぞ…。
なぜ大変なのか?
今回のペンダントフレームの問題点はいくつかあるんですよね。
「形状」
「材質」
「見た目」
この3点です。
形状はシンプルですが、細いために作業がかなりしにくいです。
その他にもこの形状は「上からの力には強いのですが、横からの力には弱い」です。
「たまご」が上には弱く横からだとすぐ割れてしまうのと同じですね。
フレームごと曲がって割れているので踏んだのか、経年劣化で逝ったのか判断が付きませんが、修理しても強度を出していくのはかなり難しい形状です。
材質に関してはパッと見シルバー925?と思ったのですが、破損部がジャギジャギしているのでホワイトメタルやバビットメタル、真鍮あたりの合金でしょうか??
断面にスが入って黒くなっていたりするので間違いなくシルバーでは無いですね。
こういった素材は一般的な彫金修理の「ロウ付け」等には融点の問題で耐える事ができず、溶かして接着などは無理なんですよね。
金属は「接着剤をつければ直せる!」モノは少ない為、これをどうするか…が問題。
面積が大きければ接着剤での取り付けができると思うのですが、先ほどの「形状」の問題でまず無理です。
と、なると見た目を無視してひたすら補強をしていけば何とかなると思うのですが、そうすると石の部分が見えなくなったり、別物になってしまいます。
石の取り付け部はグルーガン?みたいなモノで接着されており、ツメや留め具で留まってないのも問題点ですね。
んんっ!!無理!!
…とはいえこの依頼者さんは「思い出の品」らしいので極力直してあげたいんですけど…。。。
うーん。
ハンダ修復を基本で考えていく
以前ネックレスの修理をしたときにも考えましたが「はんだごて」で修復していく方向で考えていこうと思いました。
この時は「地金がハンダに耐えられない」融点の低い金属でしたが、今回のペンダントフレームがハンダ熱に耐えられるのであれば見た目を残したまま修理できると思うんです。
見た目をできるだけ変えず修理するにはフレームが細すぎて「パテ」など他の技法では正直無理。
頑張って極細ワイヤーでコイルみたいに巻けば直せると思いますが、見た目が変わってしまいますからね。
サクッと熱に耐えられるか試したところロングネックレスの時と違い、熱に耐えられそうです。
これならハンダゴテ修理ができるぞ!!!!
…とはいえまだ問題点が。
ハンダという物質は「溶接」や「ロウ付け」と違う特性を持ちます。
色々あるのですが、わかりやすく言えば「表面張力が強い」という点でしょうか。
そもそも金属修理に向いていません。例外的にステンレス溶着のハンダがありますが、あくまで例外的。
ペーストのように塗る事は出来ず、水玉のように丸くなるんですよね。
今回みたいな「切断部」を修理する場合はハンダで周囲を包み込むようにしなければいけません。
片面だけでは意味が無いですし、片方に溜まりすぎても強度が保てません。
まぁ要するに難しいんですよね。
と、言っていても仕方ないのでとりあえず「多めにハンダを盛って、余分な所は削っていく」方向性で修理していきましょう。
どうしても球体状にしか盛り付ける事が出来ず、無理に少なくしようとすれば剥がれ落ちてしまいます
限界ギリギリの量で折れた部分を包み込んでいきます
ここも削りすぎればまた折れてしまうので調整しながら削っていきます
仮止めとしてセメントを少しつけたりしながら丁寧にハンダを盛っていき、なんとか繋げる事が出来ました
フラックス(はんだを接着しやすくするもの)を塗ったのは良いのですが、やはり熱で少し黄変してますね…
多めに盛っているので見た目はあまり良くないですが、とりあえずこれで強度は問題ないでしょう
削りすぎれば強度が落ちるし、削らなければ不格好なのでゆっくりのんびり
フレーム上部は他の部分にひびも入っていたのでハンダで巻くように補強しておきました
石の接着
何となくフレームは直せたぞ!!そして考えていなかった石の接着どうしようか!!
もともとがグルーガンなんかで接着されていたのもあり、かなり雑な接着の様子。
石は「ラピスラズリ」だと思うので熱には強いですが、ここをハンダゴテで直していくのは不可能ですね。
逆に良くこれでポロリしなかったわね??
一般的な接着剤で修理するのもアリではあると思うのですが、フレームにポン付けなので絶対にいつかポロリすると思います。
石自体に穴を貫通させ「閂」を通してフレームから落ちないようにするか…??とも思ったのですが、私の手持ち機材では無理があります。
やっべ。どうしよう。
なんて僕の強い味方はやはり「光硬化系ジェル」と「接着剤」の合わせ技でしょう。
乾燥促進をさせたいので乾燥機にぶち込んで12時間放置
上、下、少しづつ接着していきます
内側の接着面を確認しながら、石とフレームの空間が近い所は”面”で更に固定していきます
しっかりと接着できたみたいなので振り回して確認します
バケツに水を入れてブンブン!!みたいな感じで振り回しても外れませんでした!OK!
念には念をいれてこのまま太陽光にしばらく放置して、磨き出し、清掃して終了です!
ラピスラズリペンダント復活!
というわけでツッコミどころはありますが大分そのままで直せたはず!!
無理難題すぎてこれが今の私の限界ですねぇ…。
完全修復するなら型をとって新造するなりの方法が正しいと思います。
クライアントさんが「どんな方法でも良いから極力そのままの形で!!」という要望を最優先したのでこれが正解の…はず。。。
納品時にも問題なかったですがもう少し完璧に直したかったですね…。
でもこれは限界あるよ(´;ω;`)
というわけで今回の作業記録はこんな感じです!
大事に使っていただけると嬉しいですねぇ…。
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